YAMAGUCHI GROUP
名古屋大学大学院理学研究科  物質理学専攻化学系  機能有機化学研究室
 
Research Highlights

Group 14 Silicon –– 最近の論文から

小さいストークスシフトをもつ青色発光性固体の創出

Intense Solid-State Blue Emission with a Small Stokes' Shift: pi-Stacking Protection of Diphenylanthracene Skeleton

A. Iida, S. Yamaguchi, Chem. Commun., 3002-3004 (2009).

[DOI: 10.1039/b901794a]

(Selected as Back Cover)

  


 有機分子の蛍光において,本質的に最も実現し難い特性の一つとして,小さいストークスシフトを伴った強い固体発光が挙げられる.ストークスシフトが小さい場合,凝集状態では著しい自己吸収を介した無放射失活過程により,蛍光はより高確率で消光される.これに対し本論文では,元来,高い蛍光量子収率 (ΦF) をもつジフェニルアントラセン骨格を,ペルフルオロフェニルシリル基を導入し,分子内πスタッキングの形成によりさらに強固な骨格へと修飾することにより,550 cm–1という小さなストークスシフトをもちながらも,結晶状態でΦF = 0.93という強い青色蛍光を実現することに成功した.さらにこの化合物を青色発光ホストに用い,高効率白色発光薄膜の作製に成功した.



シロールを含むπ電子系の化学:新規環化反応の開発から有機エレクトロニクスへ

Silole Derivatives as Efficient Electron Transporting Materials

K. Tamao, M. Uchida, T. Izumizawa, K. Furukawa, S. Yamaguchi, J. Am. Chem. Soc., 118, 11974 (1996).

[DOI: 10.1021/ja962829c]


 電子輸送性材料の開発は,有機エレクトロニクス分野全体の火急の課題の一つである.我々は,ケイ素を含んだ5員環であるシロール環の高い電子受容性に着目し,これを構成単位に用いた
π電子系の合成に取り組んだ.独自に開発したジエチニルシランの分子内還元的環化反応により一連のジアリールシロール類の効率的合成を達成し,そのうちの一つであるピリジル誘導体が有機EL素子における電子輸送性材料として実際に高い性能をもつことを示した.この化合物の改良体は,すでに小型ELディスプレイとして国内で実用化されており,電子輸送性材料のベンチマーク化合物の一つとして応用物理,電子工学分野で広く用いられている.有機EL素子の進歩に大きく貢献したといえる.