THE YAMAGUCHI GROUP
名古屋大学大学院理学研究科  物質理学専攻化学系  機能有機化学研究室
 
 
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 3配位ホウ素の一番の特徴は,カルボカチオンと等電子構造にあることである.カルボカチオンを含むπ電子系をホウ素で置換することにより,電荷が中性で,かつ単離可能なπ電子系をつくることができる.それに加えて,高い電子受容性に起因した特異な反応性も付与できる.その一つの例として我々は今回,9位にジメシチルボリル基をもつジベンゾボレピンを予期せず合成することに成功し,この化合物が顕著な吸収特性の変化を伴った光反応性を示すことを見出した.この反応は,Nazarov環化反応のホウ素版として理解できる.反応は,光照射により進行し,生成物は熱的に出発物に再変換されるという可逆性をもつ.生成物は,アリルカチオンの等電子構造であるボラタアリル骨格を含んでおり,狭いHOMO–LUMOギャップ等の特異な電子構造をもつことももう一つの特筆に値する特徴である.新たなフォトクロミック分子系として機能性材料への展開が期待できる.