THE YAMAGUCHI GROUP
名古屋大学大学院理学研究科  物質理学専攻化学系  機能有機化学研究室
 
 
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 「動くπ電子系」、即ち柔軟な骨格構造をもつπ電子系は、その動的物性を利用した機能発現が期待できる。8π環状共役化合物であるシクロオクタテトラエン(COT)は, 溶液中ではタブ型反転挙動を示す動的π共役系であり、かつ酸化還元による電子授受能に優れることから、魅力的な基本骨格である。今回我々は、COTの柔軟なπ共役構造を保持し、 かつπ共役を4方向に拡張した分子として、チアゾール環がその4,5位でhead-to-tail型に連結したチアゾール環状4量体を合成した。この分子は、π共役系が立体障害なく高速タブ型反転できるよう最適な構造に設計されており、1)電気的中性状態で浅い鞍型構造をとり、結晶中でカラム状の積層構造を形成すること、2)中央のCOT骨格は298 Kで6.8 kcal/molと非常に低いタブ型反転障壁をもつこと、3)還元したジアニオン種は平面構造をとり芳香族性を発現すること を明らかにした。今後はタブ型-平面型の構造変化を集積状態で制御することで固体物性のスイッチングに挑戦する。